アーティスティックな男の子。
関係者のカードを首から下げて、私達は21階へ。
「毎回思うんだけど、俺行かなくて良くね?」
『勧誘されて終わりだもんねぇ、秋。まあ、仮歌を歌うんだし、居ても大丈夫だって。』
「そうかなあ。」
チーンッ
『耳が痛い。』
「それな。」
高層ビルのエレベーターって耳が死ぬよね。
ガチャ
『お疲れ様でーす。』
「ちわー。」
「ゆきちゃん!!久しぶりね〜!」
『ん!?凛ちゃん!?!?』
菊川 凛 キクカワ リン。
ここの社長。
『出張から帰ってきたの?』
「そうよ〜♪はい、お土産。」
「え、いいんですか、これ?」
「いいのよ、秋君。二人には良いもの見せて貰ったしね♪」
『「良いもの…?」』
私と秋は顔を見合わせる。
イヤーな予感。
『…もしかして…。』
「この前の音楽会か…?」
「そうよ〜♪」
『「マジか…。」』
ガチャ
「え、何何。この前の音楽会って何の話?」
『うげ』
「よ、ゆき。久しぶり。秋兄も、久しぶりだな!」
「恭介!久しぶりだぜ〜!!」
桜木恭介。
彼は今注目の実力派舞台俳優。
「で?音楽会で何やらかしたの?」
『なんもしてないよ?!』
「ふふふ。桜木君にも後で送っておくわね。すごかったのよ〜、この二人。兄妹でライブやっちゃったんだから〜!」
「マジか!スゲェ!ホントにやらかしたな!!」
『聞こえが悪いぞ!恭介!!』
「んだよ〜、ゆき。」
「でも他にもやらかしたんだろ?色んな人の楽屋に突撃訪問したんだろ?」
『な、何故それを秋が知っている…。』
「全校に広まってるからな。」
『うそん。』
「どっちにしろやらかしたんだな。」
『うるさい恭介。てか私は打ち合わせをしに来たの!ダベリに来たんじゃなーい!!』
「うふふ、二人とも頑張ってね。それじゃ♪」
ガチャ
「ま、座りなよ。」
『へいへい。…んで、なんだっけ。』
「なんだっけ、じゃねーだろ。俺の1stシングルの曲を作ってくれっつー依頼な!!」
『そうだったそうだった。』
「へえ、恭介がついにシングル出すのか。」
「そうなんだよ、秋兄。」
恭介と秋と私は従兄弟同士。
恭介は22歳で、秋より歳下だから秋のことを秋兄って呼んでる。
そんで一応藤嶺芸術大学卒業生。
とは言え、恭介は子役からやっていたので芸歴はそれなりに長い。
芸歴18年だってさ。