アーティスティックな男の子。



関係者のカードを首から下げて、私達は21階へ。


「毎回思うんだけど、俺行かなくて良くね?」


『勧誘されて終わりだもんねぇ、秋。まあ、仮歌を歌うんだし、居ても大丈夫だって。』


「そうかなあ。」


チーンッ


『耳が痛い。』


「それな。」


高層ビルのエレベーターって耳が死ぬよね。


ガチャ


『お疲れ様でーす。』


「ちわー。」


「ゆきちゃん!!久しぶりね〜!」


『ん!?凛ちゃん!?!?』


菊川 凛 キクカワ リン。


ここの社長。


『出張から帰ってきたの?』


「そうよ〜♪はい、お土産。」


「え、いいんですか、これ?」


「いいのよ、秋君。二人には良いもの見せて貰ったしね♪」


『「良いもの…?」』


私と秋は顔を見合わせる。


イヤーな予感。


『…もしかして…。』


「この前の音楽会か…?」


「そうよ〜♪」


『「マジか…。」』


ガチャ


「え、何何。この前の音楽会って何の話?」


『うげ』


「よ、ゆき。久しぶり。秋兄も、久しぶりだな!」


「恭介!久しぶりだぜ〜!!」


桜木恭介。


彼は今注目の実力派舞台俳優。


「で?音楽会で何やらかしたの?」


『なんもしてないよ?!』


「ふふふ。桜木君にも後で送っておくわね。すごかったのよ〜、この二人。兄妹でライブやっちゃったんだから〜!」


「マジか!スゲェ!ホントにやらかしたな!!」


『聞こえが悪いぞ!恭介!!』


「んだよ〜、ゆき。」


「でも他にもやらかしたんだろ?色んな人の楽屋に突撃訪問したんだろ?」


『な、何故それを秋が知っている…。』


「全校に広まってるからな。」


『うそん。』


「どっちにしろやらかしたんだな。」


『うるさい恭介。てか私は打ち合わせをしに来たの!ダベリに来たんじゃなーい!!』


「うふふ、二人とも頑張ってね。それじゃ♪」


ガチャ


「ま、座りなよ。」


『へいへい。…んで、なんだっけ。』


「なんだっけ、じゃねーだろ。俺の1stシングルの曲を作ってくれっつー依頼な!!」


『そうだったそうだった。』


「へえ、恭介がついにシングル出すのか。」


「そうなんだよ、秋兄。」


恭介と秋と私は従兄弟同士。


恭介は22歳で、秋より歳下だから秋のことを秋兄って呼んでる。


そんで一応藤嶺芸術大学卒業生。


とは言え、恭介は子役からやっていたので芸歴はそれなりに長い。


芸歴18年だってさ。




< 55 / 82 >

この作品をシェア

pagetop