アーティスティックな男の子。






『…なんか、唐突に飽きてしまった。』


本当に無言でじーっとピアノを見てた、音夢君。


『…あ、その楽譜。』


ふと、目にした楽譜。


モーツァルトの“2台のピアノのためのソナタ”。


『これ、音夢君の?』


「…うん。」


『ほ〜。』


「…一緒に弾こ。」


『ほ…え?一緒に?』


「うん。」


『…弾けるかどうか分かんないんだけど。』


「大丈夫。ゆきは弾ける。」


『…じゃあ、音夢君が1stで私が2ndね。』


「うん。」


『せーの』




〜♪



『…え、音夢君ってもしかして天才型…?』


「…?わかんない。」


『じゃあこの前の音楽会に出たりとか。』


「うん。出た。」


『優秀なのは確かですねぇ。』


「突撃☆楽屋訪問!」

ビクッ

『ッ居たの!!!!??』


「うん。」


唐突に色々挟んでくるの…プチ理事長先生化になってる気がする…。


「ゆき。」


『何?』


「志貴はね、ゆきのこと、すごく大切に思ってるよ。」


『……。』


「志貴は、いつも僕に話してくれるよ。“僕の大切な宝物”って。」


『…理事長先生の差し金か何かかな。』


ちょっと私の表情筋が固くなった。


「違うよ。僕がずっと言いたかったことだよ。」


『…そうだよねぇ。あの人、私の嫌なことは絶対にしないもん。』


よしよし、と頭を撫でた。


「ゆきは、志貴のこと嫌い?」


『嫌いじゃないよ。』


「じゃあ好き?」


『…今その単語を言えば確実に突撃してくると思うんだよねぇ。』


「そうだねぇ。」


のほほん。


『なんだかね、最近ずっと愛が重くてね?』


「うんうん。」


『理事長先生もなんだけど、秋もね?ちょっと最近重いというか…いや、愛されてるのは嬉しいんだけどさ?』


「うんうん。」


『さすがにね?コレは無いと思うんだよねぇ、二人とも。』


差し出すのは、二つの薄い盗聴器。


ブレザーの首元の襟とブレザーの背中の裏側にありました。


「うわあ。重いねぇ。」


『でしょー?』


「そう言えばね、楽しげに旅行の準備してたよ、志貴。言ったの?」


『言ってない言ってない全然言ってない全く言ってないちょっとぶっ潰すわ。』


「喜んじゃうね。」


『あーっ、面倒臭いなあの人。そうだ、音夢君も8月の3週目空けといてね。』


「?」


『みんなで旅行行くから!』


「僕も行っていいの?」


『うん!あ、でも知らない人多いかも。ほぼ歳上だし…というか、今日初めて喋ったばっかりなのに誘うのもなんかアレかな。』


「ううん、僕も行く。」


『ホント!?嬉しいなあ!あ、桃李先輩と透先輩もいるから大丈夫だよ!同学年も一人いるからね!』


「うん。ワクワクして待ってるね。」


『全力で可愛い!!!!』


「ゆき。もっかい連弾しよう?」


『いいよ!!』










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