アーティスティックな男の子。
結城 悠 side
はー、誰かメイク台になってくんねーかな…。
屋敷をうろうろと歩く。
『…つか、親父もお袋も姉貴も居ねぇってどういうことだし。』
練習台が全員居ないとか有り得ねぇ。
クソ、誰かしら残ってろよ。
…学校行くか。
ピーンポーン
『…ハイ。』
「ヤオト宅急便でーす。」
『あー、今行きます。』
親父のやつ、何か頼んだのか?
まさか新作の化粧品…いや、無いか。
ガラガラガラ
『ハイ。』
玄関を出ると、目の前には黒いベンツ。
『……は?』
「引っ捕らえろー!!」
知ってる女の声がする…と思ったら、
デカい外人の男が襲いかかってきた
…と思ったから、交わして肘鉄を食らわした。
そして、
『…は?!』
ちょっと現状についていけてない、俺だった。
いやホントに意味わかんねぇんだけど。
「あれ!?チャールズさん?!え!!ちょっと大丈夫!?」
『おい、ゆき。これはどういう事だ。』
「やっだなー、ハル君!約束、忘れちゃったの?」
『忘れては…ねぇけど。』
「なんだ。…ボソッつまんないのー。」
『聞こえてっからな。つか紛らわしいことすんなよ。びっくりしたじゃねーか。』
「びっくりしてた割には適切な対処してなかった?!」
『宅配便の人に紛れるな。』
宅配便は本当にあった。
『すんません。』
印鑑と署名をし、帰ってもらった。
『で。』
「ハル君!みんなで箱根行くぞ!」
『…みんな?』
「ほらほら、乗った〜!」
『ま、待てよ。荷物取ってくっから。』
「じゃあ中で待ってるねぇ。あ、チャールズさん無事だった。良かった良かった。」
チャールズさんって誰だよ。あ、俺が殴った人か。
つか唐突に来たから準備してねぇよ。
まあ、ゆきが突拍子ないのはいつものことだけどな。
どうやら俺以外も、周りの人達も振り回されっぱなしだ。
俺も含めて。