1コインでサイダーを、
「あー......」
佐藤くんは頭をガシガシ掻いて何ともバツの悪い顔をした
どうしたのか
好きな人と話すことって
佐藤くんにはそんなに難しいことだったのかって
私の頭は痛いほどそれを認識させた
頭を掻くのをやめ、伏し目がちのまま
「平野、ってさー彼氏いる?」
佐藤くんは目を合わせずに聞いた
それは
その姿は、
質問に照れて気まずくなってる彼のそのままを象徴していて
もう既に
彼がゆきのことを好きだと示すには十分すぎる仕草だった
その時
今までにないくらい
辛い、と思った
苦しい
ここから、
佐藤くんの前から逃げたいって。
だって彼の目は
私を写していなかったんだから
私を通して
私の近くにいるゆきを見ていたのだから