死にたがりの灰田くん
その言葉にハッとして視線を落とせば、スカートは無様に広がっていて、確かに、彼からは見えてしまっているかもしれなかった。
慌てて裾を押さえつけるようにした私に、頭上でクスリ、と空気が優しく震えた。
…笑った?
好奇心に釣られて頭を持ち上げると、漸く辿り着いた彼の瞳に、小さな私が映っていた。
「豪快だね。普通あんな風に飛び込まないよ」
「…目の前で自殺しそうな人がいたら、そんなの気にしてられないから」
「お人好し」
「そうかもね」
伊達に『気が強いね』と言われて17年も生きちゃいない。
美しさに臆さず、真っ直ぐに色素の薄い瞳を見返せば、「降参」と眉を下げた彼がブラリと両手を上げた。