死にたがりの灰田くん
「その制服、俺と同じ学校だよね。何年生?」
「1年。灰田くんは知らないかもしれないけど、隣のクラスだよ」
「本当に?なんか偉そうだから先輩かと思った」
先輩かと思ってたのに、敬語は使っていなかったところが流石というか何というか。
さらりと失礼なことを言ってのけた灰田くんに、パシャンと軽く水を掛けた。
「冷たっ!」
「寒い。早く上がろ」
入水自殺する予定だったはずの彼は、私の言葉に仔犬のような笑みを浮かべて、大人しく後を付いて河岸に上がった。
なんなんだろう、この違和感。
どうしても、この人が本当に死にたがっているようには見えなかった。
だからこそ、お節介にも助けに行ってしまったのだけれど。