孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
鈴英はいまいち必死さが伝わっていないことを察知して、内心舌打ちをして、ボソッとつぶやいた。


「これだから、都のボンボンは・・・」


暴言である。そして、それはしっかりと3人に聞こえていた。確かにここにいる鈴英以外の3人は、子どものころから貧しさからは無縁の生活をしている。だが、暴言は暴言。静玉にいたっては女性でボンボンですらない。

大神官が咳払いをする。

「そなたが里に帰りたい思いはよくわかった。」

「だったら!!」

「しかし、それはできぬ相談だ。」

「何でよ。」

「神のお導きによって選ばれたそたなが、それを嫌がり里に帰ったならば、それは神の意志に背くことになる。そうなれば神はお怒りになるやもしれん。」

「そんなことで神様は怒るの?」


「確かに、神はお怒りにならないやもしれない。しかし、重要なのは、神がお怒りになるかもと、人々が不安になることなのだ。大神官の役割とは皆が安心して暮らせるようにすることなのだ。人々を不安にさせるようなことは慎むべきだ。」

「つまり、私が帰っちゃったら、みんなが不安になって大神官様が困るってこと?」

「簡単に言えばそうだ。」

それを聞いた鈴英は口をつぐんだ。


「鈴英。そなたは何も聞かされずここに連れて来られたと聞いた。さぞかし戸惑っていると思う。しかし、一度選んだことを覆すのは難しいことなのだ。」

静かに語る大神官を鈴英はじっと見つめた。
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