孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
右も左もわからない二人
鈴英は、激しく後悔していた。この宮中に留まったことをである。

綺麗で真面目でちょっと厳しそうだと思っていた静玉が、実は、綺麗でかなり頭が固くてものすごく厳しかったのが最大の原因である。

「鈴英様!!聞いておられるのですか??!!」

「は、はい。」


今は、宮中での挨拶の仕方について絶賛勉強中だ。

「手の位置は、胸の前!!」

「はいっ!!」


「礼の角度はこのくらい!!」


「はいっ!!」


「それでは頭を下げ過ぎです!!」


「ご。ごめんなさい!!」


「『ごめんなさい』ではなく、『申し訳ございません』です。鈴英様。」


「はい。申し訳ございません!!」


傍から見ると、その様子は礼儀を習うと言うより、新人軍人の訓練のようだったと後に仲良くなった別の女官に言われることになる。


「今日はこれくらいにして、次は、文字を読む練習をいたしましょう。」

対して運動もしていないのに、肩で息をしていた鈴英は、パッと顔を輝かせる。


「ホント?!すぐ用意します!!」


「『本当ですか?』です。鈴英様」

「はーい。」

「伸ばさない!!」


「はい!!」


良い返事をした鈴英は、いそいそと棚から筆と紙を持ってきた。それを静玉はじっと見ていた。
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