孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
「鈴英様は、文字の勉強がお好きなのですか?」

「え?うーん。どうかな?好きなのかな?」


即答すると思っていた静玉だったが、鈴英の答えは意外に歯切れが悪かった。


「熱心にやっておられるようなので、お好きなのかと思っておりました。」

静玉がそう言うと、鈴英は困ったように笑った。


「いや。ほら。私ってずっとここにいるわけじゃないって言ってたでしょ?だからね。文字が書けたら、その後色々出来るかなと思って。」

それを聞いた静玉は納得したと同時に驚いた。先のことを見越しての行動とは思っていなかった。静玉はジッと鈴英を見つめた。

初めて会った時こそ、礼儀もなっておらず、なぜ、こんな小娘が選ばれたのかと思ったが、数日経った今では、それこそ神のお導きのように感じていた。


静玉は、新米女官の教育係をやっていたことがある。そこでは色々な身分の色々な人間を見てきた。そのため、人を見る目には多少の自信があった。

鈴英は、貴族でもなく教養もない。しかし、決して馬鹿ではない。素直で純粋であり理解力もある。先ほどの発言から意外に思慮深いとも思う。鈴英のようなものこそ、大神官の子を宿すにはふさわしい者のように思えた。


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