孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
静玉の驚き発言からさらに数日後。鈴英は未だかつてないくらい緊張していた。今夜、初めて大神官と閨を供にするからだ。

訳もわからず王宮に連れて来られて10日が経っていた。何も知らなかった鈴英を慮って、大神官が猶予をくれたが、もうそれも限界だった。

選ばれた娘が未だ大神官の手がついていないということは、宮中の噂の的になっていた。そのことで龍神の怒りを買い、干ばつが起ったらどうするのだという非難の声があがり、それは日に日に強くなっていった。

これ以上待つのは、むしろ鈴英にとってよろしくないと静玉は言った。鈴英もそれにうなずくしかなかった。

かくして、鈴英はここに連れて来られた日以来、10日ぶりに大神官に会うのだ。まともに話したのは1度しかないが、鈴英は、大神官が嫌いではない。しかし、それが抵抗なく抱かれられるかと言えばまた別の話だ。しかも、鈴英には別の懸念もある。


鈴英の緊張は最高潮に達していた。


コンコンと扉を叩く音がして、鈴英は飛び上がった。


「ひゃあい」

妙な声が出た。


「・・・・・」

「・・・・・私だ。入るぞ。」


妙な沈黙が流れた後、大神官が入ってきた。


鈴英が部屋の入口へと目をやると、やはり顔を布で隠している大神官がそこにいた。


寝具の横にちょこんと座っていた鈴英は、いたたまれなくなって下を向いた。

その目の前に大神官が座る。
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