孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
鈴英が覚悟を決めた時、静玉は言った。

「大神官様には触れてはなりません。」

「え?触らなくて子どもなんてできるの?」

「そんなわけないでしょう?」

「そーですよね~」

大神官にもなると触らずに妊娠させることができるのか?などと思ったがどうやら違うらしい。

「大神官様が鈴英様に触れるのは良いのです。しかし、鈴英様が大神官様に触れるのは許されません。」

「ふーん。」

その時は、いまいち納得できなかったが、そんなもんかと気に留めなかった。しかし、今は違う。顔も見ることはできず、自分から触れることすら許されない。それがこんなにも辛いとは思わなかった。


「鈴英、よいか?」

「はい。」


大神官が、そっと寝具に鈴英を横たえた。


想像以上に痛かった。必要以上に触れ合うことのない行為は、幼馴染たちから聞いていた夫婦の初夜とはずいぶん違う。接吻も甘い言葉もない。


それでも、鈴英は必死に耐えた。横たわる瞬間に聞こえた、『すまない』と言う言葉が鈴英をそうさせた。これ以上、この人の負担になりたくない。そう思った。

それは、鈴英が大神官のことを少なからず思っている証拠であった。
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