孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
大神官という男
衣服を整えた大神官が振り返ると、鈴英は眠っているようだった。きっと慣れないことに疲れたのだろう。

頬に残る涙が流れた跡が、大神官の心を締め付けた。鈴英の衣装も整えてやるべきか悩む。必要以上に他人と触れ合うこと許されない大神官は、こんな時でさえ躊躇ってしまう自分が嫌になった。

結局、大神官は鈴英に布団をかけただけで部屋を後にする。部屋を出ると少し離れたところに、鈴英付きになった女官が待機していた。

大神官を見て、頭を下げる彼女の横を通り過ぎる時に声をかけた。


「眠っているから、行って衣服を整えてやってくれ。」

「かしこまりました。」


女官がさらに頭を下げるのを横目で見ながら、大神官は足取りを速めた。

鈴英の部屋は、神官たちが住まう一角から少し離れた場所にある。神官たちの居住区に、女である鈴英を立ち入らすことはできない。従がって、大神官が鈴英の部屋を訪れたのだ。

走ることはないが、できるだけ速く足を動かし、自室へと戻ると、自分の付き人が湯あみの準備をしていてくれた。

「おかえりなさいませ。」


「あぁ。湯あみをする」

「準備してございます。」

「すまない。」


最低限のやりとりを済ませた後、浴室へと向かった。大神官は頻繁に身を清める必要があるため、自室に浴室がある。大きくはないが、しっかりと人一人が入れる桶と排水設備が整っている。

たっぷり湯の張られた、桶から湯を救い上げ体にかける。そしてゴシゴシと身体が赤くなるぐらい擦った。
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