孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
大神官は、決して鈴英に触れたことで自分が穢れたとは思っていない。しかし、彼にある強迫観念がそうさせるのだ。

鈴英は、自分が処女であることで、大神官を穢してしまうことを心配していた。大神官は、血が出るなんてことは知らなかったし、鈴英には気にしなくても良いと言った。それは本心だ。しかし、それはあくまでも大神官個人の考えだ。

それが本当は許されない行為だったら?もしも龍神の怒りを買う行為だったら?その結果、干ばつが起きて多くの命が失われたら?そんな不安が、大神官を襲う。

念入りに体中を擦る。皮膚が赤くなっても、痛みを感じても擦り続けた。だが、いくら擦り続けても不安はぬぐえない。きりが無いように思えて、湯あみを終えた。


浴室を出ると、風を感じた。見ると窓が開いている。その風に雨の匂いを感じた時、自分の中にある不安がスッと消えていくのを感じた。


部屋にはまだ、付き人が残っていた。彼が雨が降っていることに気づいて開けてくれたのだろう。彼は、雨が大神官の心を何よりも軽くしてくれることを理解していた。


「尋ねてもよいか?」

「なんでしょう?」

「自分で処女を散らすとは、そんなに辛いことなのだろうか?」

大神官の言葉に付き人、楊泰舜(ようたいしゅん)は絶句した。信じられないものを見るような目で大神官を見ている。
< 22 / 28 >

この作品をシェア

pagetop