孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
「えーそれは・・・もしもそれを強要したなら、控えめに言っても外道ですね。」

「そうか。」


大神官には、ピンと来ないが、泰舜が言うならそうなのだろう。何と言ってもこの男は、宮中一の色男だったのだから。

基本的に、神官の付き人は、神官見習いである。しかし、大神官は例外である。それは、大神官が子をもうけることが理由だ。

その昔、選ばれた女人をどう扱っていいかわからなかった大神官が、自分の付き人に助言を求めたことがあった。しかし、当時は付き人も神官であった。女人の扱いなど知るはずもない。おおっぴらに相談できる内容でもなく、二人とも困り果てるという事態が起きた。

そんな出来事があって以来、大神官の付き人は宮中一、女人の扱いに慣れている者がなるというのが暗黙の了解である。もちろん、当代の付き人泰瞬も例にもれずである。


「大丈夫だったんですか?」

「あぁ。たぶん。」

「多分って・・・」


「多分は、多分だ。もう下がってよいぞ。」


どう言われようと、多分としか答えようがないし、詳しく説明しようとは思わない。しかし、鈴英の涙の跡を思い出した大神官は思わず眉間に皺を寄せた。鈴英にとっては大丈夫だったか、それについては多分とさえ言えなかった。

悪いことをしてしまった。鈴英に対してはその一言に尽きる。まさか、鈴英を選んだ時、まさが自分が何のために集められたかを知らなかったなんて思いもしなかった。

しかし、選んでしまった後でそのことがわかっても、今更取り消せるはずもなかった。

先代ならどうしたのだろう・・・と大神官は思う。


歴代の大神官の中で最も自堕落だったという父なら。

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