孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
そもそも龍神に言われた対価が曖昧過ぎたのだ。「孤独」とは何か。普通ならば、誰にも会わずに山奥に引きこもるなどすることができる。

しかし、大神官の血は絶やしてはいけない。そこに矛盾が生じる。

昔は、子をもうける期間だけ宮中に留まって、他は人里離れた場所で大神官を幽閉するような形をとったこともある。

しかし、それでは色々な不都合が生じたのだ。

例えば、大神官が脱走を試みたとか。いつのまにか妻を娶って幸せに暮らしていたとか。はたまた知らない間に亡くなっていたとか。

そんなことが何度かあり、結局、大神官は宮中で生活するようになった。

だが、宮中の生活にも個人差がある。「孤独」の定義が曖昧で日々の過ごし方には決まりがあるようでない。

もともと緑豊かな国で、干ばつなどめったに起こらないことから、大神官のその規律も段々と緩まって行った。

その最たるが先代の大神官である。肉を食し、酒を飲み、祈りは適当。さらには女官にも手をつける始末。

そんな先代は30歳という若さでこの世を去ってしまった。

この事態にあわてたのが周りの人間だ。大神官が30歳という若さでこの世を去ったのは、龍神の怒りを買ったからではないかという噂が立った。

このようなことを繰り返せば、いずれ大干ばつが起るのではないかと。

その不安を一身に背負うことになったのは、当時10歳だった当代の大神官だ。父である大神官の死後、10歳という若さで大神官の座につくことになった。

彼は、父である先代の大神官のした行いへの不興や、干ばつへの恐れをまだ小さい肩に背負うことになってしまったのだ。


そして、彼はいまだにそれを独りで背負い続けている。
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