孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
宮中の生活と新しい友達
グニっという感触に思わず「ひっ」と軽く悲鳴が漏れた。

恐る恐る足をどかすと、熟れた瓜が潰れていた。気持ち悪い感触の原因はこの潰れた瓜らしい。部屋の前の絶妙な位置に置かれている瓜を鈴英は踏んづけてしまったのだ。

「あら。今日は瓜でございましたか。」

後から聞こえる静玉の声はどこかのんびりとしている。

「足、洗いたいです。」

「承知いたしました。」

足の裏に瓜をつけたままでは、ろくに歩くこともできない。いや、鈴英としては、そこらへんに擦り付ければいいだけだが、それをやれば後ろの静玉からお叱りを受けるのがわかっているのでやらない。

ジッと待っていると、静玉が水の入った桶を持ってきた。桶の中に足を突っ込んで洗い、手布で拭う。

鈴英が足を洗っている間に、静玉は手早く熟れた瓜を片付けた。


「うーん・・・そろそろどうにかした方がいいと思います?」

こういった悪意の向けられ方に慣れていない、鈴英は、静玉に意見を求めた。


「そうでございますね・・・」


静玉は苦笑いを返した。静玉にとってもどう対応するべきか悩むところなのだ。

宮中では、女の争いは日常茶飯事だ。女官の間はもちろん、特に苛烈なのは帝の妃賓の間での争いである。

それは陰湿で、時に命の危機さえあるし、実際、過去には命を落とした妃賓も珍しくはない。

それに比べて、熟れた瓜である。ちなみに、その前は、嫌なにおいのする草だった。確かに嫌がらせではあるが、静玉の知っている女の争いからすると、かわいらしいものである。しかも、相手が相手だけに難しいところなのだ。

そう、犯人には心当たりがある。というかあからさまに敵意を向けられているので間違いようがないのであった。
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