孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
大神官に選ばれた鈴英は、訳もわからないまま別の部屋へと移された。案内役の女官は、部屋につくなり、鈴英の服を脱がそうとしてくる。

鈴英は襟元を抑えて女官の手から逃れた。

「何をするの?!」

「お召し物を換えていただきます」

鈴英が抗議すると女官は表情一つ変えることなく言いはなち、再び鈴英の服を脱がそうする。


「待って!ちょっと待っててば!!」

「いかがなされました?」

「なんで、服を着替える必要があるの?」

「今から大神官様とお会いになるからです。」

「さっき会ったよ。」

「今度は二人きりでお会いしていただきます。」

「なんで?もしかして、さっき子どもがどうとか言ってたあれ?」

「………もしかして何もお聞きになっていらしゃらないのですか?」

「何も聞いていない。ただ黙って頭を垂れていれば終わると言われたの。」

それを聞いた女官は絶句した。


「なんと………あれほどきちんと説明して連れてくるように言われていたのに。」


女官は額を抑えてため息をついた。


「いいでしょう。時間はありませんが、何も聞いていないのなら仕方がありません。私が説明いたしましょう。」


「お願いします。」


「まず………えーっと」

「あ、采鈴英です。」

まだ名前も名乗っていなかった。


「そう、鈴英様とおっしゃるのですね。私は、李静玉(りせいぎょく)と申します。これから鈴英様のお世話をさせていただきます。」

李静玉と名乗った女官は、真面目で頭が固そうだったが、綺麗な顔をしていた。たたずまいは洗練されており、ど田舎で畑仕事か家事かに勤しむ人しか知らない鈴英にとっては年齢不詳だ。


< 3 / 28 >

この作品をシェア

pagetop