孤独な神官はど田舎娘に愛を乞う
「じゃあ私、大神官と結婚するの?」

「大神官様です。鈴英様。いいえ。結婚は致しません。神官は婚姻を結ぶことを禁じられていますから。」


「え?大神官……さまの子どもを産むのよね?」

「はい。」

「ということは、妻になるってことじゃないの?」

「なりません。」

「・・・・夫でもない人の子どもを産むの?」

「そうです。」

「で、子どもが産まれても夫婦にならないの?」

「そうです。」


鈴英には信じられなかった。鈴英の村でも、たまに結婚と妊娠の順序が逆転することはある。しかし、そのまま未婚ということはありえない。そもそも未婚のまま生涯を終えること自体が稀である。


鈴英は、大神官の子を産み育てるが、その大神官と結婚出来ないというとこは・・・

「え?私、一生独身?」


ポツリとつぶやいた一言は、それは今までの人生からは考えられないことだった。

実は、鈴英の村では、鈴英と同い年の娘はすでに結婚している場合がほとんどだ。実際、鈴英の幼馴染とよべる娘たちは鈴英を除く全員が結婚していた。子どもがいるのだってめずらしくない。鈴英は、祖父母が相次いで亡くなり喪中だったため未婚だが、喪があけて少なくとも1年以内にはどこかに嫁ぐはずだった。

それが、いきなり王宮に連れてこられて、結婚もせず大神官の子を産めと言われても、到底受け入れられるものではない。

しかし、女官は鈴英の想像をはるかに超えることを教えてくれた。
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