恋しくて
あめあがり
みどり葉濃きまま
銀杏落ちて


初秋の雨が冷たく降る夜、あなたが言った

ごめん・・・。

待ち合わせたカフェで、いつもより早く来て待っていてくれたあなたに、緩む頬を見られたくなくて髪をかきあげながらあなたの表情を盗み見た。

私に気付かないあなたは時計を見ながら重苦しそうな、恋人に会える喜びなどどこにもない表情に、私の心は痛くて苦しくて息ができなくなりそうだった。

そんな私をあなたは知らない。

大きく息を吸って自尊心を傷つけられることを恐れた私は、必死で笑顔を貼り付けてあなたの前に立った。

私にとってこの時の笑顔は武装だった。

ちゃんと笑えてた?

鼓動が激しくて胸が苦しくて泣きそうな弱虫な私をあなたに見られたくなかった。

それ以上聞くことなんてできなくて、あなたから逃げたかったから、一人になって精一杯頑張った私の恋を抱きしめてあげたかったから。

わかった・・・。

一言言って手放した初恋。

雨が上がっていることに気づいて空を見上げると街灯に照らされた緑葉の銀杏。

足元には未だ落ちるには時期早々の実に失恋を重ねた。

込み上げて止まらぬ感情を許した途端視界はぼやけていった。



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