仕事も恋も効率的に?
『...本田』
『はい?』

今だ2人で楽しそうに現場の写真を見て笑う2人に割ってはいる。

『この起案だが』
『あ、はい、なんでしょうか?』

ふっと真面目な顔になり、やっと俺の方に体を向けたが顔はバインダーにしか向けない。

『ここは、課長でいいんじゃないか?』
『あー、私もそう思ったのですが、係長から指摘があったので直しました』
『そうか...。それと、ここなんだが』
『はい』

わざとバインダーをみちのデスクに置き、デスクごと囲うようにする。

『っ!』
『...これは、関数で入ってるのか?』
『そう、ですね。生データ見ますか?』

必死に、手放さないようにする仕草に同僚が笑いを堪えてるのがわかる。木下君も気が付いたようで、爆笑している。

『コレですよ』
『...ふぅん、これの方がいいんじゃないか?』
『そうですねぇ...次の報告の時に直す、でいいですか?』
『あぁ』

全く目線も合わさず、こんなに寄せても顔は赤いが気にしないようにした素振りが気に入らない。

『今度は何に怒ってんだよ』
『怒ってませんよ?』
『へぇ?すんごく機嫌悪いだけか?』
『別に機嫌も悪くないですって』
『...うそつけ』
『ほんとですよ?どうしたんですか、急に。あ、あと修正ないですか?』
『あ、あぁ...』
『ありがとうございました』

ペコッと頭を下げると、また木下君の方に行こうとするので、つい声をかける。

『あっ』
『??』

同僚達は、ここまで来るとクスクス笑いから爆笑へと変貌しており、抑えられなくなっている。

『本田さん、写真はあとにしましょう!佐川さんが用あるみたいですよ?』
笑いながら木下君が助け舟を出してくれる。

『ん?なんですか?昨日のデータの件でしたらもう少し時間が...』
『あ、あぁ、それじゃなくてだな...』

課内の同僚全面協力の元、俺、佐川コウ40歳の、好きな子へのアプローチが始まってるわけで...。
なんでこうなった...。

ほんとはもっと、余裕あるように、スマートにしたいのに...。
そんな考え事をしていると、丁度チャイムがなる。

『あ!すみません!お茶当番忘れてた!洗ってきます!』

バタバタと走りながら去ってしまう。
むぅと不機嫌になる俺。結構素直に出てしまう。
仕方ないので席に戻ろうとすると、同僚達のからかいに会う...。

『佐川くーん、がんばらないとねぇ?笑』
『がんばってます、これでも!』
『本田さんかわいーからなー』
『ちょ、ダメですよ!』
『お?本気にした 笑。佐川君一途ぅ 笑』
『あーもー!そーですよ!!』

課内で気が付かないのはみちだけか...。
つか、俺、大丈夫?この歳で...。

そんな思いをしながらみちを待つ。
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