仕事も恋も効率的に?

★半歩の進展★

翌日、だるい身体を推して出勤する。
今日は県報告の締め日だからだ。

『はよーございまーす...』
『おはよ』
『!お、おはようございますです...』
『あのさ、今日って...時間ある?』
『今日は~、県の対応があるので、それが終われば大丈夫ですよ』
『あ...いや、仕事じゃなく...えーと...』

意を決して朝一番から、誘ってみたが、どうやら仕事を頼まれると思ったようだ。こういう時に、なんて誘えばいいのか、頭の中でぐるぐるする。

『終わり次第お声かけにいきますね...。っくしゅん!』
『あ、あぁ。大丈夫か?』
『全然へーきですよ?っくしゅ...』
『風邪か?顔色良くないし、無理すんなよ??』
『ありがとうございます...。あ』
『ん?』
『おめでとうございますです』
『...あ?』
『いえ、なんでもないです...。では後ほど』

グズグズと体調悪げなみちが気になる。
だが、朝から話せたことに少し気分が良く、仕事が捗る。
しかし、何が目出度いんだ??みちと進展すればおめでたくなるんだが...。なんて考えてると、みちが動く。

『係長~、報告出しました』
『おー、さんきゅね!あ、そだ。これの根拠ってさ...』
『はい、根拠はこの添付にある通りで...』

俺と絡んでない業務報告のようだ。
係長の隣のデスクの俺としては、少しでも見ていられるから目が離せない。
だいたい、昨日の北川さんの話を聞いてから、益々焦る。取られてたまるか...。
でも、他の女性と話すのも嫌だと思うなら、俺の事気にしてるってことじゃん?と、ちょっとにやけてしまう。

『どーしますか?現場出ますか?』
『んー、状態だけは確認したいよね』
『んじゃ写真撮ってきますよ』
『いい?じゃあ誰か...』

ホワイトボードに目をやると、今日はみんな現場に出ていて車もカラカラだ。

『現場には、業務はカラカラなので維持の方にちょっとヘルプお願してみます。ただ、車...オートマ出ちゃってますかねぇ...?私マニュアル無理なんですけど...』
『あー、そだよねぇ。車は1台は主幹が使ってるし、あと空いてるのありますか?狭山さん!』
『スカイラインなら空いてますよ』
『...マニュアルだ...。係長、すみません、この件は近日中で...』
『係長、私が連れていきます』
『え...?』
『佐川くん、頼める??』
『え...??』
『勿論です。着替えるから待ってて』
『え...え...、係長、また...』
『佐川くん、頼むね』
『はい』

ええええええええ!
なんで私の意見聞いてくれないの!
別に後日でもいーじゃん!!
なんでよりによって昨日の今日で...、精神的に無理だよぉぉぉぉ!!
心の中で泣き喚いてみるも、現実は変わらず。

俺、今日の予定空いててよかった!!1人でガッツポーズしそうになる所を、後ろで笑ってる北川さんに見られる...。

『よかったじゃん?笑』
『お陰様で。...譲りませんよ...?』
『ケラケラケラ 笑。気になるとは言ったけど、別に佐川くんの邪魔はしないよ 笑。可愛い子は気になるっしょ 笑』
『それが気に入りませんよ!まったく...』
『佐川さんってば、ほんとゾッコン 笑』
『からかわないでくださいよ...。とりあえず、着替えてきます』

とりあえず作業着に着替えると、コウさんも作業着姿。

すらっとしているので、なんともない作業着ですらカッコよく見える。
うちは、作業着の指定がないので好きなデザインや色を選べる。私のは紺のパンツに白に裏地がチェックの少し可愛いもの。コウさんは、オーソドックスな白の上下だが無駄に似合う...。長い足が更に目立つ...。

被る予定もないが、体裁上持ったヘルメットと、ヒールでは歩けないので安全靴(最近のはスニーカーやブーツタイプでオシャレなやつが多い!)に履き替えて待つ。

『係長、行ってきます』
『はいよー、頼むねー』
『はい』

自然に公用車の鍵と2つのヘルメットを持つコウさんの後ろを歩く。

『...お忙しいのに...、すみません...』
『んや?全然?』
『...挙句に運転して頂くようになっちゃって...ほんとすみません...』
『いーっつの 笑。お前と2人で出れるし、運転くらい男にさせろって 笑』
『...また...。はぁ...』

深いため息をつくみちと反対に、足取りが軽くなる俺。
作業着で迫るのもちょっとアレな気がして、大人しく後ろをついてくるみちを気にしながら車まで向かう。

『で、どこだっけ』
『え?』
『現場 笑』
『聞いてなかったんですか?笑。もう 笑』

久しぶりに笑ってる顔が見れて、ドクンッと心臓が跳ねる。

『濱中の現場の状況みたいので、ちょっと遠いですけど大丈夫ですか?無理しなくて大丈夫ですよ??』
『了解。全然大丈夫だぞ?むしろ2人になれて嬉しいし?』

ニコニコしながらエンジンをかける。公用車らしからぬ、ちょっと大きめの音。軽くアクセルふかしたあと、でるよ、と目的地へ向けて走り出す。

結構、マニュアルを運転する男性の手が好きで...。更にそれがコウさんなのだから、ずーっとミッションの上に置かれてる手を見つめてしまう。

『どした?』
『え、いや、なんでもないですよ?』

若干上ずった声に、心の中がバレてませんようにと祈る。

『...運転、うまいですよね』
『ん?そーか?お前に言われると嬉しいな』
『...また...、まぁ、私酔いやすいのですが、佐川さんの運転だと酔わないです』
『...んじゃずっと俺の隣にだけ乗ってろ。どこでも連れてってやるから』
『はぁ...、ありがとうございます。現場に出るのもそんなにないのでアレですが、その時はお願いします...』

男として、運転を褒められるのは単純に嬉しいが、みちに言われるのが益々嬉しい。
それに、若干勘違いされてるが、俺の隣に乗ることを否定しないのが堪らない。

『山道入るから、気持ち悪くなったら言えよ?』
『はい、大丈夫ですよ。佐川さんの運転で気持ち悪くなったことないですから 笑。安心してます 笑』
『っ、そ、か?ならいいけど、無理はすんなよ?』

思わずポンッと頭を撫でてしまう。オートマと違って、運転しながら手を握っていたり出来ないが、凝視されてるシフトチェンジを考えると、この操作とかが好きなんだろうなって思う。

小一時間ほど走り、現場に着く。

『はい、到着』
『ありがとうございます。ちょっと写真撮ってきますね』

パタパタと出てしまう。
華奢な線が、大きめの作業着からわかる。男女兼用だから同じサイズだと思うが、全然違うな、なんて思う。袖が長いのか手首で少し折り返し、襟を立ててる上着に、細腰を強調する紺のパンツ。
どんなカッコでも...かわいーな...。なんて素で思ってしまう辺りが重症だなと笑ってしまう。

外の空気をすいながら、写真を撮るみちを見つめて待つ。
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