仕事も恋も効率的に?

★ゼロ距離★

『お待たせしました!』

軽く車で休んでいた俺に、温かいコーヒーを持ってみちが戻る。

『お、さんきゅ』
『いえいえ。帰りましょっか』
『...んー...、嫌だけどしゃーねーな』
『なんですか、それ 笑。サボりたいわけでもないでしょう?笑』
『んー?バックレちゃおっかなー、なんて思ってるよ?笑』
『まぁ!私まで道ずれにしないで下さいよ?笑。そーゆーのはお1人で出てる時にしてください 笑』
『お前とだからそう思うんだけど?1人でバックれてどーすんだよ 笑』
『なっ...』
『まぁ、流石に連れ回してるのバレてるし?仕方ないから遠回りして帰るかな 笑』
『またそんなこと言って...』

本当に遠回りをしながら、他愛もない会話をする。

『あ、あそこの店結構美味いぞ』
『へぇー、イタリアン?』
『そそ。野菜とか新鮮で美味い。今度行こう』
『...そうですねぇ...』

さり気なく言ったつもりだが、本当は心臓バクバクしてる。プライベートで行こうって誘ってる意味は、伝わってると思いたい。

『あ、あそこもイルミ始まるみたいですよ~』
『お、季節だなぁ。いつからやるんだろな?』
『明日とかじゃないですか?今週末からとかって回覧で見たかも』
『んじゃ明日来てみる?』
『え?』
『っん?なんか変な事言った?』
『...聞き違いです、なんでもないです』

ぽーっと、暗くなり始めた外を見つめるみち。結構積極的に誘ってるつもりなんだが...。

『っくしゅ...』
『あ、朝から具合良くなかったんだろ?大丈夫か?』
『全然、大丈夫です』
『そうか??もう少し車暖かくしよう』
『ん、すみません...』
『...ちょっとコンビニ寄るから待ってな』
『はい』

飲み終えたコーヒーを片付けながら、温かいお茶と水を買って戻る。

『ほら』
『あ...すみません...。ありがとうございます』

見えにくい場所にとめておいた車の中で、大人しくなるみちが心配になる。

『とりあえず、俺のかけとけ』
『わふっ!』

温もりが残る上着をかけられ、抱きしめられる錯覚に陥る。
気を張っていたが、流石に夕方になると不調が増してくる。段々と朦朧とする感覚。

『...もしかして、熱あるんじゃねーのか?』
『...大丈夫...』
『朝から変だと思ったんだよ!ったく!』

ずいっと助手席側に身体を寄せ、コッとお互いのおでこを当てる。

『!!マジで熱いじゃねーか!ちょっと待ってろ、冷やすの買ってくる』
バタバタと怒りながら出ていくコウさんを見ながら、今ので体温が2度ほど上がったんじゃないかと思う...。元々低体温の私は、今朝は微熱よりちょい高いくらいだったし...大したことないと踏んでいたが...。

『待たせたっ』
ひんやりした空気と、走ってきたのか、前髪が上がっているコウさんを見つめる。

『ったく...ちょっとシート倒すぞ』
グンっと少し後ろに倒されるが、そんなことより私の上に平然とイケメンが乗っている...。その状態に熱が益々上がる。
また、確認するかのようにおでこを当てる。

『...やっぱ熱あるな。無理すんなって言ったろーが』
『...』

顔が近すぎる...。このままキスできちゃうなぁ、なんて朦朧とした頭で思う。結構ハマってるのがわかる。薄暗くなっても、これだけ近いとハッキリ見えるから、ぼうっと見つめてしまう。キリッとした目、ちょっと怒ってる...。ふいに離れ、何かを開けている。

『ちょっと冷たいぞ、我慢な』
熱を冷ますシートをおでこに貼られる。
その上から、また整った顔が近付き、髪を撫でる。

『...すみません...、大丈夫です...』
『なーにが大丈夫だ。んなうるうるの目で言われても説得力ねーっつの』

顔を近づけたまま、小声で...でも低い声が響く。

ドクッとうるさい心臓を沈めることも出来ず、このまま素直に伝えてしまおう...。
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