仕事も恋も効率的に?
週が変わった月曜、いつもの様にみちは早めに来てコーヒーを入れている。
溜まった回覧を纏め、担当のデスクに綺麗に重ねる。
『おはよ』
『おはようございます、佐川さん』
『おう』
遅刻ギリギリ(とはいえ、朝礼にギリギリなだけで、業務開始まではもう少しある)の俺に引き換え、各課のお姉ちゃん達はよく早くから動いている。慣例と化した、女性は掃除とお茶を入れる、が、良くも悪くもここも同じ。
こーゆーところがイマイチなんだよな、と思いながら今日も業務が始まる。
『今日の午後って時間ある?』
『っ!!!』
なんでいつもいつもこの人は急に現れるのだろう...。集中してる時に限って隣に立たれるから心臓に悪い。
『また驚かせた?笑』
『いーえ...』
軽く睨みながら見上げると、笑いを堪えてる姿。
『で、午後なら空いてますよ』
『くくくっ...そっか、なら、行くか?』
『おお、行きましょ』
『んじゃー、午後イチな』
『はーい』
先日、メンテナンス機器を置いている場所を見てこようと話していた件だ。
午後になり、そろそろ行こうかと作業着を羽織る。
『そろそろ行こうか』
『はい』
『と、狭山さんも用があるみたいで...一緒に行くことに...』
『あぁ、そういえば行こうって話してました』
『そうか...。さて、行くぞ』
正直言えば残念だ。2人で出かけることが出来ると浮かれていた俺、本気で落ち込むが仕方ない。
ホワイトボードに記載し、持っていくものを用意する。
『っと、持ちますよ?』
よいしょ、と装置を持ち上げる姿をみて、慌てて両手から奪う。
『俺が持つから...』
『っと、ありがとうございます。んじゃ、残り持ちますね。狭山さん、書類持って貰えますか?』
重いものを率先して持って動く。木梨さんそっくりだなと笑える。
公用車置き場まで歩き、バンのドアを開ける。
車内に入れようと、みちの持ってる装置を受け取るタイミングで手が重なる。
『っ、ほら』
『ありがとうございます』
ニコニコ言われて、少なからずドキドキする。
2人だったらそれはそれで俺がまずかったかも、と思いながら運転席に乗り込む。
後部座席では女性陣の楽しそうな話を聞きながら、ちょっと羨ましい。
程なくして到着する。
3人とも公的身分証を提示し、中に案内される。
『っうわ...』
雑残とした中にデスクが並ぶ。うちの備品の山々がそこここに置かれている。
『今日は2点ありまして、まずは備品なんですが...』
狭山さんが確認する備品類の確認作業に入ってもらう。
『さて、本題です。まず、紹介します。本田です』
『本田と申します。よろしくお願い致します』
『こちらこそよろしくお願いします。おかけください』
『今後、管理やメンテナンスも、私は本田に対応させたいと思っています』
『まあ!助かります!』
え??と顔を見合わせたが、本題に入る。
長机の応接テーブルで、資料を提示し、説明していく。
『こちらですが、佐川に送っていただいているものと、田丸に送っていただいているもの、2種あるのは何故でしょうか?』
『...以前は同じものをお送りしていたのですが...、田丸さん...何度も同じ質問の電話をされてきて...』
『え...』
『はぁぁぁ...』
深い溜息と、こちらの手際の問題かとガッカリしながら進める。
『...であれば、必要ないです。今後は本田が確認作業すればそういったこともないかと』
『ええ、佐川に送っていただいているものを、田丸と私にCCで頂ければ問題ないですよ』
『ほんとですかー?!もう、データ作り直すのも時間かかるし、その間に変更も出てしまうしで...』
だからデータズレてたのか、と納得しながらも、困ったねと顔を合わせる。
『申し訳ありません。今後は大丈夫かと。それからメンテナンスも本田が組み上げているので...そろそろ、な?』
『ええ、まもなく出来ます』
『私たちは楽な方法を考えているので、なるべく早めに送らせますね』
『よろしくお願いします!』
『あ、それからこの件なんですが、情報頂けますか?』
『あ、わかりました。...本田、戻ったら俺に言って...忘れそう...』
『くすくすくす...わかりました 笑』
『仲がいいんですね~』
ニコニコされて言われると、気恥ずかしくなる。
『佐川の手伝いをしてますので』
『んなっ、まぁ、なんつーか...』
つい照れてしまうが、俺が指名してるんだから図星といえば図星。
出されたアイスコーヒーを飲みながら、狭山さんの確認が終わったのを見計らい、退室する。
『それにしても参りましたね』
『だな...』
『とりあえず、佐川さんが対応してくれれば大丈夫ですよ。安心』
また笑顔を向けられられ、心臓が跳ねる。
『ん、一緒なら大丈夫だ』
なんだか、よくわからない返事をしてしまったが、またこれで一緒に出来ることが嬉しい。そう思いながら本庁に戻る。
翌日、朝イチに電話を取ると、昨日行ったラプソルからだった。
『今日いらっしゃいますか?』
『ええ』
『これから、上のものと伺いたいのですが...』
『ええ、今日は佐川も私も中におりますから、いつでもどうぞ』
『ありがとうございます、今から伺います!』
なんだろ?と思いながら、取り急ぎ報告する。
『今日、いらっしゃるそうです、ラプソル』
『ん?昨日行ったのにか?』
『うん。なんか上の方といらっしゃるとか。佐川もいるって答えたら、今から来るって』
『ふーん、なんだろな?とりあえず、わかった』
近場のため、すぐに到着。
『奥へどうぞ』
何やら資料を出しているみちを待ちながら、別件の業務の話をしていたが、なかなか来ない。
『っと、これ、どうぞ』
『ん、ほれ、座れ』
『あれ、私待ち?』
『そーだよ 笑。お待たせしました。本田です』
『申し訳ありません。お待たせ致しました、本田と申します』
有り体に名刺交換をし、隣に座ると本題に入る。
昨日の中身を直接説明して欲しかったのだろう、同じ内容を話して、喜んでもらえた。
田丸さんがいたが、同席はしないまま話は進む。
『今後は本田様にお送りすればよろしいのですよね?』
『いや、私と本田で』
『なるべく複数に送ってください。確認が遅れることもありますので』
『わかりました』
しばらく、隣同士であーだこーだと説明し、1時間ほどして解放。
『...嵐ですね...』
『そーだな...』
どっと疲れてデスクに戻り、タバコ吸いに行こうと独り言を言って喫煙所に向かう。それを横目に、疲れた、と俺も机で一息を入れる。
溜まった回覧を纏め、担当のデスクに綺麗に重ねる。
『おはよ』
『おはようございます、佐川さん』
『おう』
遅刻ギリギリ(とはいえ、朝礼にギリギリなだけで、業務開始まではもう少しある)の俺に引き換え、各課のお姉ちゃん達はよく早くから動いている。慣例と化した、女性は掃除とお茶を入れる、が、良くも悪くもここも同じ。
こーゆーところがイマイチなんだよな、と思いながら今日も業務が始まる。
『今日の午後って時間ある?』
『っ!!!』
なんでいつもいつもこの人は急に現れるのだろう...。集中してる時に限って隣に立たれるから心臓に悪い。
『また驚かせた?笑』
『いーえ...』
軽く睨みながら見上げると、笑いを堪えてる姿。
『で、午後なら空いてますよ』
『くくくっ...そっか、なら、行くか?』
『おお、行きましょ』
『んじゃー、午後イチな』
『はーい』
先日、メンテナンス機器を置いている場所を見てこようと話していた件だ。
午後になり、そろそろ行こうかと作業着を羽織る。
『そろそろ行こうか』
『はい』
『と、狭山さんも用があるみたいで...一緒に行くことに...』
『あぁ、そういえば行こうって話してました』
『そうか...。さて、行くぞ』
正直言えば残念だ。2人で出かけることが出来ると浮かれていた俺、本気で落ち込むが仕方ない。
ホワイトボードに記載し、持っていくものを用意する。
『っと、持ちますよ?』
よいしょ、と装置を持ち上げる姿をみて、慌てて両手から奪う。
『俺が持つから...』
『っと、ありがとうございます。んじゃ、残り持ちますね。狭山さん、書類持って貰えますか?』
重いものを率先して持って動く。木梨さんそっくりだなと笑える。
公用車置き場まで歩き、バンのドアを開ける。
車内に入れようと、みちの持ってる装置を受け取るタイミングで手が重なる。
『っ、ほら』
『ありがとうございます』
ニコニコ言われて、少なからずドキドキする。
2人だったらそれはそれで俺がまずかったかも、と思いながら運転席に乗り込む。
後部座席では女性陣の楽しそうな話を聞きながら、ちょっと羨ましい。
程なくして到着する。
3人とも公的身分証を提示し、中に案内される。
『っうわ...』
雑残とした中にデスクが並ぶ。うちの備品の山々がそこここに置かれている。
『今日は2点ありまして、まずは備品なんですが...』
狭山さんが確認する備品類の確認作業に入ってもらう。
『さて、本題です。まず、紹介します。本田です』
『本田と申します。よろしくお願い致します』
『こちらこそよろしくお願いします。おかけください』
『今後、管理やメンテナンスも、私は本田に対応させたいと思っています』
『まあ!助かります!』
え??と顔を見合わせたが、本題に入る。
長机の応接テーブルで、資料を提示し、説明していく。
『こちらですが、佐川に送っていただいているものと、田丸に送っていただいているもの、2種あるのは何故でしょうか?』
『...以前は同じものをお送りしていたのですが...、田丸さん...何度も同じ質問の電話をされてきて...』
『え...』
『はぁぁぁ...』
深い溜息と、こちらの手際の問題かとガッカリしながら進める。
『...であれば、必要ないです。今後は本田が確認作業すればそういったこともないかと』
『ええ、佐川に送っていただいているものを、田丸と私にCCで頂ければ問題ないですよ』
『ほんとですかー?!もう、データ作り直すのも時間かかるし、その間に変更も出てしまうしで...』
だからデータズレてたのか、と納得しながらも、困ったねと顔を合わせる。
『申し訳ありません。今後は大丈夫かと。それからメンテナンスも本田が組み上げているので...そろそろ、な?』
『ええ、まもなく出来ます』
『私たちは楽な方法を考えているので、なるべく早めに送らせますね』
『よろしくお願いします!』
『あ、それからこの件なんですが、情報頂けますか?』
『あ、わかりました。...本田、戻ったら俺に言って...忘れそう...』
『くすくすくす...わかりました 笑』
『仲がいいんですね~』
ニコニコされて言われると、気恥ずかしくなる。
『佐川の手伝いをしてますので』
『んなっ、まぁ、なんつーか...』
つい照れてしまうが、俺が指名してるんだから図星といえば図星。
出されたアイスコーヒーを飲みながら、狭山さんの確認が終わったのを見計らい、退室する。
『それにしても参りましたね』
『だな...』
『とりあえず、佐川さんが対応してくれれば大丈夫ですよ。安心』
また笑顔を向けられられ、心臓が跳ねる。
『ん、一緒なら大丈夫だ』
なんだか、よくわからない返事をしてしまったが、またこれで一緒に出来ることが嬉しい。そう思いながら本庁に戻る。
翌日、朝イチに電話を取ると、昨日行ったラプソルからだった。
『今日いらっしゃいますか?』
『ええ』
『これから、上のものと伺いたいのですが...』
『ええ、今日は佐川も私も中におりますから、いつでもどうぞ』
『ありがとうございます、今から伺います!』
なんだろ?と思いながら、取り急ぎ報告する。
『今日、いらっしゃるそうです、ラプソル』
『ん?昨日行ったのにか?』
『うん。なんか上の方といらっしゃるとか。佐川もいるって答えたら、今から来るって』
『ふーん、なんだろな?とりあえず、わかった』
近場のため、すぐに到着。
『奥へどうぞ』
何やら資料を出しているみちを待ちながら、別件の業務の話をしていたが、なかなか来ない。
『っと、これ、どうぞ』
『ん、ほれ、座れ』
『あれ、私待ち?』
『そーだよ 笑。お待たせしました。本田です』
『申し訳ありません。お待たせ致しました、本田と申します』
有り体に名刺交換をし、隣に座ると本題に入る。
昨日の中身を直接説明して欲しかったのだろう、同じ内容を話して、喜んでもらえた。
田丸さんがいたが、同席はしないまま話は進む。
『今後は本田様にお送りすればよろしいのですよね?』
『いや、私と本田で』
『なるべく複数に送ってください。確認が遅れることもありますので』
『わかりました』
しばらく、隣同士であーだこーだと説明し、1時間ほどして解放。
『...嵐ですね...』
『そーだな...』
どっと疲れてデスクに戻り、タバコ吸いに行こうと独り言を言って喫煙所に向かう。それを横目に、疲れた、と俺も机で一息を入れる。