Aliceーアリスー




その光が消えて現れたのは真っ白な髪と大きな赤い瞳が印象的な美少年だった。


「僕、アリスの為に魔法使いになったんだよ」


美少年が笑って私の手を握る。


「アリスの望みを叶えるよ」


そして愛おしげに私を見つめた。


何が起きているのかわからない。瀕死状態だとこんな不思議な幻も見てしまうものなのか。
あれ、私、瀕死状態…だよね?

その異変に私はすぐに気がついた。あの意識が遠のくほどの激痛がないのだ。


「な、何で」


言葉もはっきりと発することができた。

もしかして私が知らないうちに私は死んでしまって今は幽霊、だとか?


「延命の魔法をかけたんだよ。アリス」


今のこの変な状況に首を傾げる私に白ウサギが口を開く。


「魔法は何でもできるからね。だからアリスの望みを叶えに来たんだよ。〝不思議の国のアリス〟の世界に行きたいんでしょ?」


微笑む白ウサギの言葉を聞いて私はハッとした。
夢物語だと成長した私自信でさえも鼻で笑い、すっかり記憶の彼方に片付けられていた幼い私の望み。
私でさえ忘れていた望みを白ウサギは何年も何年も覚えていたのか。





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