Aliceーアリスー
「幸せだよ」
でも答えに迷うことはなかった。本当に今の私ははっきりと自分が幸せだと答えられる。
「そうか。今回のアリスは幸せでよかった。アリスが幸せだとこの世界も幸せで溢れる。今の世界が1番幸せな世界だ」
ふわりと帽子屋が私に優しく笑い、私の頭を撫でた。
どういう意味なのだろう?
今回?私が幸せだと世界も幸せ?
「これからも笑っていてくれ、アリス」
私の問いかける視線に気が付いているはずなのに帽子屋はそれには答えようとせず、ただ笑っているだけだった。
*****
帽子屋屋敷を出て、次に向かった場所はもちろん白ウサギが待っている女王様のお城。
女王様のお城は帽子屋屋敷の倍広く、最初の頃は1人だとよく迷子になっていたが、ここでの生活も長いのでもう迷子になることはなくなった。
今日も歩き慣れた廊下を歩いて目的の場所へ向かっているとメイドさんたちに会い、目的の場所へではなく何室もある内の中で1番豪華な応接室に案内された。
「あぁ!私の可愛いアリス!」
そこにはすでにソファに腰掛けている女王様と白ウサギがいた。そして私が部屋に入室するなり女王様は満面の笑みを私に向けた。
「こんにちは!女王様!」
私もそんな女王様に応えるように笑みを浮かべる。
すると女王様はいつもの調子で「相変わらず愛らしい娘ね」とうっとりした顔で私を見ていた。
「アリス、こっちへおいで」
「うん」
白ウサギに手招きで呼ばれ、私は白ウサギの隣に座った。女王様は向かい側にゆったりと座っている。
「女王様、白ウサギ、お仕事お疲れ様。はい、これ差し入れだよ」
席に着くなり私は手に持っていた袋からクッキーが入っている箱を取り出した。
女王様の顔は私がいるからなのかとても上機嫌でにこやかだが、目の下には化粧でも隠し切れていない濃い隈があるし、どこか疲れたような色が見える。
それに対して白ウサギは飄々としているが。