Aliceーアリスー




「白ウサギ、アナタがいつも私に言っていることをそのまま言ってあげるわ。この世界はアリスのもの。この世界ではアリスが全て」


なかなか話が進まない私たちの会話に入ってきたのはもちろん女王様。
女王様は白ウサギを小馬鹿にするように続けて言う。


「アリスが望むことは例えどんなことでも叶える。それを叶える為の私たちであり、それがこの世界の全て。この世界の在り方そのもの。だから白ウサギ。例えアナタでもアリスにだけは逆らえないのではなくって?」


そして疲れの色こそ残っているが、その美しい顔に意地の悪そうな笑みを女王様は浮かべた。まさに悪役といった顔つきである。


「…お前にそれを言われるなんてね」

「あら、可愛らしいウサギさんの仮面が取れているわよ?」

「…うるさい。黙らせるよ?」

「あぁ怖い怖い」


楽しげな女王様と不機嫌な白ウサギの会話。普段とは立場が逆転しているとても珍しい場面だ。


「アリス。その冒険には必ず僕を連れて行ってね。1人で行こうとしないで。約束だよ」

「もちろん!帽子屋たちとも行く約束をしているよ!」

「そう…」


まだ納得していない様子の白ウサギがどこか悲しげに私を見つめた。
元気よく返事をしても白ウサギはそのまま。笑顔を私に見せることはない。
この世界で生きるようになって気がついたが、白ウサギは私に対して非常に過保護すぎるところがあると思う。








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