Aliceーアリスー




「チェシャ猫はブラジルを知らないの?」


「知らないね。聞いたことも見たこともないよ。それはどのくらい面白いものなの?」



不思議に思って聞き直せば、チェシャ猫も不思議そうに私を見つめた。

私とチェシャ猫の話は全くと言っていいほど噛み合っていない。


「ブラジルは面白いものでも何でもないよ。ブラジルは国だから」


「へぇ。で、国って何」


「へ?」



1つ説明すればまた1つ新たな疑問が産まれてしまうことに私は驚きチェシャ猫をマジマジと見つめる。


国って言葉自体知らないの?


「国は……えっとなんて説明すればいいんだろう……あの簡単に言えば1つの地域といいますか、何というか……」


上手く国の意味を説明する言葉が見つからずどんどん声の大きさが小さくなってしまう。


難しい……。


「よく分からないけどアリスは俺の知らないことを知っているみたいだね、面白いなぁ」


困っている私とは裏腹に興味深そうにチェシャ猫が私を見つめて笑う。


「この世界はとっても狭くて退屈だと俺は思っているんだよね。時間はいつまで経っても過ぎないし、いつもなーんにも変わらない。だからいつも〝ここ〟にはいないアリスを見つけた時、俺、すっごいワクワクしたんだよね」


チェシャ猫が明らかにおかしくてありえないことを私に言う。


時間がいつまで経っても過ぎない?何も変わらない?

それってすごくおかしなことじゃない?


時間はいくらでも過ぎていくものだし、変化は常にあるものだ。


だから人は成長するし、歳を取る。








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