Aliceーアリスー
何を言っているの?
怪我をしても、死んでもいいだって?
パシンっ
訳が分からなくて、でもすごく不快で、頭の中の血が一気に沸騰したと思った次の瞬間には私は帽子屋の頬を平手打ちしていた。
「おかしなことを言ってるのは帽子屋の方よ!無下にしていい命なんてない!」
帽子屋に怒鳴って今すぐこの狂気のクロッケー大会を中止させようと女王様の所へ向こうとする。
でも……
「行ってはダメだよ、アリス。死に急ぐことはない」
それは恐ろしいほど冷静に微笑む帽子屋に腕を掴まれたことによって阻まれた。
「……っ、離して!」
どんなに力を入れても、腕をブンブン上下に振ってもその手が離れることはない。
暴れれば暴れるほど帽子屋は笑みを深め、腕を持つ手に力を込める。
帽子屋は男で、私は女。
いくら頑張ってもその差は大きくどうにもこうにも逃れることができない。