Aliceーアリスー
「ありがとう!チェシャ猫!でももうちょっと違うやり方がよかったんですけど!」
お礼と苦情をチェシャ猫に同時に伝えるとチェシャ猫は、
「あははっ、わざとだよ。アリスいいリアクションするね」
と最低な答えが帰ってきた。
忘れてたコイツは意地が悪い、自分さえ楽しければいい、自分勝手なドS猫だった。
「はぁ、全くとんだじゃじゃ馬娘だね、アリス」
自分から私を無理やり引き剥がされたにも関わらず帽子屋は焦る様子もなく、その笑みを崩さない。
「いいのかい?チェシャ猫。女王に逆らうことは死ぬ……、いや、死ぬだけなら可愛いもの、死に続けることを意味するんだよ?」
「そうかもしれないね。でも同じことの繰り返しにはもう飽きたのさ。帽子屋だってそうだろう?」
帽子屋とチェシャ猫が互いに見つめ合う。
2人とも目は笑っているが、相手が次はどのように動くのか、どのような手を使うのか伺うような鋭い目付きだ。
「はぁ、負けたよ。確かに一理ある。私も飽きた、この世界に」
最初に緊張を解いたのは帽子屋。
降参、と両手をヒラヒラとあげて降る。