Aliceーアリスー




「あら!アリスが私の為に歌を!そこのメイド!今すぐカメラを回して!」


冷や汗をダラダラと流す私とは裏腹に女王様は嬉しそうに頬を赤く染め、近くにいたメイドに声をかける。


ええ!?録画されるの!?


だけど女王様の肩越しに見える作戦はまだ終わってない様子なのでここは女王様の気を引くためにも歌うしかない。


ええい!なるようになれ!


「じょ、女王様は〜美しい〜、優しい〜、素敵〜、大好き〜、愛してま〜す〜」


音痴ではないと思うが上手くもない。

つまり微妙な歌声にして、微妙な歌詞。


ただただ恥ずかしい。


こんなディスるのもある意味難しい曲を聞くと微妙なリアクションをするのが一般的だと思うが女王様は違った。


「素晴らしい!恥じらう姿はまるで可憐な花のよう!歌声は小鳥のように聞いていて心地よい!そして何より歌詞!私への愛が痛いほど伝わる芸術的でセンスしか感じられない!」


えぇ……?


興奮した様子で早口で感想を述べ、スタンディングオベーションで私に感激した様子で割れんばかりの拍手を女王様が1人でする。

そして「みんなもそう思うでしょ!感動して動くこともできないのね!」と私を初め、微妙な表情を浮かべて固まっていた使用人たちにそう声をかけ、さらに拍手の輪を広げていた。

女王様、盲目的ではありませんか?







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