Aliceーアリスー
心の中で小さな冗談を言える程度には冷静になったところで私はまた1つの違和感に気づく。
「ねぇ、帽子屋はどこ?チェシャ猫やヤマネは?」
ここは見覚えのある帽子屋屋敷の一室だ。
だけど今目の前にいるのは家主の帽子屋ではなく、帽子屋の友人である三月ウサギのみ。
帽子屋を始め、チェシャ猫、ヤマネの姿さえもない。
嫌な予感がするのは気のせいなのか。
私の疑問を聞いて三月ウサギが表情を歪める。
その表情がまだ何も言われていないのに私が感じた嫌な予感を肯定しているようで、心の中がざわざわする。
お願い、みんなはいつものようにお茶会をしていると言って。
「……裁判所だ。罪は反逆罪。判決は間違いなく死刑」
だが、私の願いなんて届く訳もなく三月ウサギは私から悔しそうに目線を逸らしてそう呟いた。
「嘘でしょ?」
嘘であって欲しいという願いを込めてポツリと力なく言葉が私から出る。
「本当だ」
私の言葉を肯定するしかない三月ウサギはとても苦しそうで。
辛そうで。
私のせいだ。