Aliceーアリスー
それから道中何度聞いても三月ウサギからの答えはなかった。
終始前を向いたままで背中からは話しかけんなオーラが出ていた。
まぁ、苦手なことを随分頑張らせてしまった私も悪いのだが。
やはり説明系は帽子屋が1番適任なのだろう。
三月ウサギの得意分野は食べることと暴れること。
頭を使うことは不得意分野とみた。
「……着いたぞ」
今まで黙っていた三月ウサギが不機嫌そうに前を見つめ、そう私に声をかけてきた。
目の前に広がるのはこれまた豪華絢爛な赤と金の大きな扉。
煌びやかな装飾がされたそれからは女王様の趣味をお庭同様にひしひしと感じてしまう。
この扉の向こうがあの裁判会場だ。
大丈夫。私はこの物語の行く末を知っている。私が知っている〝不思議の国のアリス〟とは少し……いや大分内容が違うが、それでもきっと大丈夫。
私はアリスだ。
諦めない、そこだけでもきっと一緒だ。
「……入る前に1つアリス、お前に言っておく」
扉に手をかけた三月ウサギがその動きを停めて私を見つめる。
「白ウサギが言っていた。全てはお前、アリスの為だって。〝物語の通り〟に、て」
「……っ!」
「……んじゃ、行くぞ」
言いたいことが言えたらしい三月ウサギは私から再び視線を扉に戻して大きな扉を押した。
私の為?物語の通り?
どういうことなのだろう。白ウサギは何がしたいのだろう。