Aliceーアリスー
ギィィィィッ
重みのある低音と共にゆっくりと扉が開かれる。
「うわぁ……」
目の前に広がる絵本そのものの裁判会場に思わずこんな時だが感嘆の声をあげてしまう。
赤と白と黒のみで統一されたおかしな空間。
罪人の場所には帽子屋、チェシャ猫、ヤマネの姿があり、裁判長の位置には大きな座り心地の良さそうな椅子に腰掛けた女王様の姿があった。
「……連れてきたぞ」
「……」
私たちがいる場所はそのちょうど間くらい。そこまで行くと三月ウサギは最悪の機嫌で女王様に声をかけたが女王様は微笑むだけで返事は一切しない。
つまり無視だ。ついでに目も笑っていないことを報告しておく。
「アリスよく来たわね、こちらへいらっしゃい」
引き続き目が笑っていない女王様が私にそう優しく声をかけ手招きをする。
「……っ」
なんて恐ろしい笑顔なのだろう。
あまりにも美しくそして他者の心を恐怖心で支配する女王様の笑みを見て私は思わずその場で硬直してしまった。
「あら?どうしたのかしら?早くいらっしゃい、私の可愛いアリス」
そんな私を見てクスクスと少女のように女王様が笑う。
「……っ」
それでもいつまでもこうしている訳にはいかない。私の目的は帽子屋たちを助けることなのだから。
私は意を決して女王様の元へ一歩、また一歩と歩みを進めた。