Aliceーアリスー
やっとの思いで女王様の元へ辿りつくと女王様はそんな私を見て満足げに微笑んだ。
「アナタを待っていたのよ、アリス」
「……」
私はそんな女王様を恐れることなく真っ直ぐ見つめた。
恐ろしく、そして何よりも美しいこの女王様から私は帽子屋たちを助けなければならない。
今は怯んでいる場合ではないのだ、と自分を鼓舞した。
「挑発的な眼差し、嫌いじゃないわ」
何も言わず、ただ女王様を見つめ続けるだけの私を愉快そうに女王様が見つめる。
「さてそれでは裁判を始めましょうか」
そして女王様は私から名残惜しそうに視線を逸らすと、裁判会場全体に目を向け、会場にそのよく通る声を響かせた。
ついに裁判が始まるのだ。
まず最初に口を開いたのは女王様と帽子屋たちの間に立っていた身なりの整った中年男性だった。
「帽子屋、チェシャ猫、眠りネズミ、三月ウサギ。彼らの罪状は反逆罪でございます。先日のクロッケー大会の時、彼らはあろうことか我らが崇拝すべき絶対の存在であられる女王様に盾付き、クロッケー大会をめちゃくちゃにしました。女王様、罪深き彼らに判決を」
中年男性は手元にある紙の内容をさらさらと事務的に読み上げて女王様を見つめる。
いやいやいや。
「ちょっと待ったー!」
裁判のくせに有罪、無罪を決める前にそもそも有罪であると決め付けられていることに意義を唱えたのはもちろん私だった。
他にもツッコミ所満載の裁判だが、とりあえず私が帽子屋たちの弁護人として帽子屋たちを弁護しなくては。
「こんな裁判おかしいわ!あんな狂気のクロッケー大会を阻止して何が悪いの!?命を粗末にしているあの大会の方がよっぽど悪いと思うけど!」
「こ、小娘!貴様は何を言っているのかわかっているのか!そもそもお前に発言を許した覚えはないぞ!」
「うるさい!許されなくたって発言くらい勝手にするわよ!こっちにもこっちの言い分があるのよ!」
私の言い分に顔を真っ赤にして中年男性が反論する。そして私もまた怯むことなく中年男性に言い返した。