Aliceーアリスー
1人で喋っている?
「何を言っているの?私は白ウサギと話しているのよ?」
彼らには白ウサギが見えていないのだろうか。不思議に思いながらも私は彼らにそう訴えた。
「アリス、ここにいる全員、僕が見えていないんだよ」
「は?」
「そういう都合のいい魔法を今僕は使っているからね」
私の訴えに答えたのは白ウサギ。あり得ない内容に思わず眉を潜めたが、私は少し考えて納得せざるを得なかった。
何故なら全員が私を不思議そうに、あるいは奇妙なものを見る目で見ていたからだ。
では、何故みんなから姿を隠すことが白ウサギにとって都合がいいのか。
「物語もいよいよ佳境!どうアリス?楽しんでいる?」
考え込む私なんて余所に白ウサギが愉快そうに笑う。
「楽しい?そりゃあ、もちろん楽しかったよ。夢のような時間だった」
「それはよかった」
素直な感想を言えば白ウサギは何故か嬉しそうに笑った。だが、私の感想はそれだけではない。
「でもね、これが夢だったらよかったとも思う。これが現実なら余りにも酷すぎるから」
全ては物語の中だから許されたものだ。横暴な女王様だって、命の価値観が低すぎることだってそう。
現実として目の当たりにした時これを楽しいとは私は思えなかった。
「でも君はもっと酷い世界から逃げて来たんだよ?」
先程まで嬉しそうだったはずの白ウサギの表情が曇る。