Aliceーアリスー




それは一体どういうことなのか。


「さあ、アリス。君が望んだ結末を」


気を取り直したように微笑んで、白ウサギがそう言うと私のワンピースのポケットの中に何かが現れるのを感じた。


「何これ…」


ポケットに違和感を覚えてポケットを見る。触った感じは柔らかい。
意味がわからず白ウサギに聞こうと顔を上げるとそこにはもう白ウサギの姿はなかった。

どこかへ行ってしまったのか、それともここにいる全員と一緒で見えなくなってしまっただけなのか。

疑問しかない。せっかく白ウサギに会えたのに疑問の解決どころか新たな疑問を残されたこの状況が歯痒い。


「それでは帽子屋、チェシャ猫、眠りネズミ、三月ウサギは反逆罪とし、未来永劫死刑とする。今すぐこの者たちの首をはねよ」


白ウサギと話している間にどうやら裁判は進んでいたらしい。女王様は先程の上機嫌はどこへ行ったのやら、冷たい表情で帽子屋たちにそう告げていた。


「待って!だからそれはおかしいと…」

「よくお聞き、アリス。例えアナタであってもこれだけは覆せないわ。ここでは私こそがルール。私と言うルールに逆らう者は首をはねられる。おわかり?」


急いで反論しようとしたがそれは力強い女王様の言葉に遮られてしまった。

どうしよう。このままでは本当に帽子屋たちの首がはねられてしまう。

目の前の現実にどんどん気持ちが焦って行く。
だが、私はこの物語の行末を知っていた。物語通りに話が進めば、最後には私が帽子屋たちを絶対に助けられるはずだ。

裁判所にたくさんのトランプ兵がやってきた。そして処刑台を手際よく準備をし、帽子屋たちを1人1人連れて行く。


まだ?私はまだ大きくなれないの?


〝不思議の国のアリス〟のラストはアリスが大きくなってこのトランプ兵たちを蹴散らして終わるのだ。だから私は自分が大きくなる時を待っていた。だが、私の体は一向に大きくなる気配はない。





< 98 / 127 >

この作品をシェア

pagetop