君と見つける、恋の思い出


「だから、すみれちゃんのお願いは聞いてあげたい。でも、蓮くんといられないのは嫌だ」


「……欲張り」


「それでいいよ。いつまた入院生活に戻るかわからない今、出来るだけのことをしたいの」



そう言われたら、なにも返せない。



「私は、誰が一番かなんて決めない。みんな一緒なの」



叶花らしい考え方だと思った。



こんな叶花だから、あんなことを言われて悩んでいるんだと思う。



それにしても……



「二人、そんなふうには見えなかった」


「女は嘘と演技が上手なのです」



……悪いが、信じられない。



叶花を見て、嘘や演技が上手いとは思えない。



と言いたいところだが、叶花は一つも嘘をついていない。


彼女と仲良くしたいという思いゆえの、あの行動。



嘘をついて、演技をしていたのは彼女のほうだ。



「すごいよねえ、すみれちゃん。一途に蓮くんのことを想ってるんだもん。私にはわからないや」



誰かを一番に、という概念がない叶花には、理解できないだろうな。
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