君と見つける、恋の思い出
「そうだ! あのね、お兄ちゃんが文化祭来るって!」
話題を強制終了させ、やっと振り向いた叶花は、さっきの悩みを感じさせない、いつもの笑顔だった。
「よかったな」
「うん!」
こうして俺も叶花もクラスのほうには戻らず、一日を終えた。
というか、文化祭当日まで似たような日を過ごした。
叶花は準備したかっただろうが、ちょっとでも無理して入院、なんてことになりたくなくて、部室に篭もっていた。
文化祭一日目は、保護者のみの公開で、体育館でいろいろな催しが行われただけ。
言うなれば、二日目が本番だ。
二日目は、二年と三年はクラスTシャツの着用が義務付けられている。
一年にないのは、展示がほとんどで、着る必要がないからだ。
「いいなあ……私も着たい!」
「あとで貸してやる」
許されるなら今すぐ貸したいが、開会式はTシャツを着て体育館に集まるから、すぐにバレる。
その間だけの我慢だ。
そして部室に戻ってきたと同時に、俺はTシャツを叶花に渡した。