【短】ズルくて、ごめん。



いつかの放課後の、教室で。


葵と一緒に帰る約束をしていた俺が、職員室に行ってるお前を待ちながら眠ってしまったとき。



『青、大好きだよ』


俺の髪を愛おしそうにそっと撫でた葵の声に、俺は目を覚ましたんだ。




「な、にそれ…。知らない。夢でも見たんじゃない…?」

「バカ。そんな夢見るかよ」

「……じゃあ、別の誰かだよ。私じゃない」

「俺がお前の声聞き間違えるわけないだろ」



明らかに葵の瞳は揺れている。


心地いいお前のソプラノが俺への想いを告げたあの瞬間、驚くよりも何よりも、嬉しさが勝っていた。


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