【短】ズルくて、ごめん。
「待てよ、葵」
「……っ、なに急に。離してよ」
立崎とは反対の手を掴んで、それを止める。
久々に葵の動揺する顔を見た。
その顔を見たら余計に、立崎と2人きりにはさせたくない。
「ちょっとこっち来い」
「ちょ…っ、青!」
ナオちゃんも立崎も、今は頭にはなかった。
ただただ、今この瞬間、葵の手を離してはいけないと思ったから。
勢いよく葵の手を引っ張って、葵が立崎と行く予定だったであろう空き教室に入り込む。