ねえ、きみがすき
├彼らの事情
そう紡ごうとすると同時にスマホの画面が目の前に突き出された。
【お願い、それは黙っていて】
画面に浮かんでいるその文字を読んだあとに見た西浦くんの顔はひどく真剣で。
「…言わないよ」
そう、返すしかなくて。
そもそも、誰かに言おうだなんて思ってなかったけど。
「…だけど、どうして?瞳の色とか、名前とか──」
独り言のように呟いていると、再びスマホを突き出される。
【瞳の色が違うのはカラコン。目がゴロゴロするからカラコン苦手で、もう誰にも会わないと思ったし外したんだ】
そしたら、あたしがここに来ちゃった、と。
って、え?あたし普通に西浦くんと会話してる…?
耳、聞こえないんだったよね…