冷たい幼なじみが好きなんです


一瞬、遥斗が先月のわたしの誕生日にわたしにあげるはずだった新品の時計を百合ちゃんにあげたのかと思ったけど…………これは、わたしのだ。間違いない。どうして百合ちゃんの手に………?

──カタン!

時計から目が離せなかったそのとき、またなにかが落ちる音がした。


「はあ!?最悪なんだけど!!」

どうやら、百合ちゃんと女が揉み合っている最中に、女の携帯が床に落下し、画面が割れたようだ。


「ふざけんなよお前!!土下座しろよ!!」


女の怒り声が更衣室全体にこだまする。

関わりたくないほかの生徒たちは、逃げるようにそれぞれ教室とプールへ向かっていく。


「ね、ねえ笑ちゃん………先生呼んできたほうがいいよね………?」


隣にいる優香が困惑した表情を浮かべて、わたしの裾を引っ張りながら小声でそう言った。


「土下座しろって言ってんだよ!!ほら、はやくしろって──ッ!」

女が、百合ちゃんに対して大きく手のひらを振りかざした──!

──パシンッ!


「…………………いった」


…………………ビンタされるのなんて、17年間生きてきて生まれて初めてだ。貴重な経験を、どうもありがとう。

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