冷たい幼なじみが好きなんです
「優香、ありがとう…」
「ううん。わたし…先行ってるね?」
水着に着替え終わっている優香はちらりと別の方向に視線をやったあと、プールへ続く階段をのぼっていった。
………気づけば、更衣室にはわたしともうひとりの二人だけになっていた。
「…………どうして?」
まるで疑問に満ちあふれたその声が、静寂のなかそっと響いた。
そのもうひとりは…………そこに落ちている時計をゆっくりと拾いあげて、こう言った。
「………どうしてわたしを助けるの?この時計、盗んだのわたしなんだよ?あなたが焼却炉のところで落としたのわかってて、自分のものにしてたんだよ?」
百合ちゃんはなぜか、自分からそんな自白をした。
だけどわたしはそんなこと…………今さらなにも気にならなかった。
ただ、わたしは…………。
「………………遥斗が悲しむから…………」
「…………え……?」
わたしはただただ視線を落とし…………自分でも無意識のうちに、言葉を続けた。
「……百合ちゃんになにかあったら……遥斗が悲しむから……。……遥斗は、百合ちゃんのことが大好きだから……」