冷たい幼なじみが好きなんです


“この時計はもういらない”

わたしはあのとき、遥斗を傷つけた。

もうわたしは、遥斗に傷ついてほしくない。悲しい想いをしてほしくない。

わたしと遥斗はもう縁を切ってしまったけど………

わたしは遥斗の幸せをいつまでも願ってるから………。

だれよりも幸せになってほしいから──……。


「………………あなたって………」


「……その時計は、百合ちゃんが持ってて……。わたしが持ってるより、百合ちゃんが持ってたほうが……遥斗も喜ぶと思うから……」


「………………」


百合ちゃんはなにも言わず………更衣室を静かに去っていった。


わたしは………まだ着替えてすらないのに、まるで水のなかにいるみたいに………息が苦しくなった。

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