イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
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残業を終えて営業室を出たところで根本さんとバッタリ遭遇したのは、入社して一年が経った頃。彼は辺りをキョロキョロと見回して誰もいないことを確認すると、「柴田さん。俺とつき合わない?」と言った。
唐突な告白に驚いたけれど、営業課の主任である彼に密かな恋心を抱いていた私は、すぐに「はい」と返事をした。
私より十も年上である彼とおしゃれなバーでカクテルを飲み、高級ホテルの一室で肌を重ねる。あのときの私はこの幸せが永遠に続くと信じていた。それなのに……。
「アミ……」
ベッドの上で私の首筋に唇を寄せた彼の口から出たのは、知らない女の名前。ふたりの間に気まずい空気が流れる。
「ねえ、アミって誰?」
「……」
横たえていた体を起こすと彼に詰め寄った。でも彼の口は堅く閉じたまま。
「私のことは遊びだったの?」
お願いだから否定して……。
涙声で尋ねると、背中を丸めた彼がクシャリと前髪を掻き上げた。
「……ごめん」
たった三文字で二股を認めた彼に背中を向けて着替えると、ホテルの部屋を後にした。
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