イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

うろたえながら安藤から視線を逸らす。すると掴まれていた手首が解放された。

「穂香、溶けるぞ」

「あ、うん」

安藤がジェラートを食べるように勧めてくる。しかし彼が口をつけた箇所が、どうしても気になってしまう。だからといって安藤の唇が触れた部分だけ避けて食べられるはずないし、いつまでもジェラートに口をつけないのは不自然だ。

スプーンでジェラートをすくいあげて味わえば、すぐに安藤の口角が上がった。

「間接キスだな」

「へ、変なこと言わないでよっ!」

咄嗟に声を荒らげてしまったのは、安藤が中二男子みたいなことを言って私をからかうから。

昨日のキスには一切触れないくせに、間接キスにだけ反応を見せる安藤が気に入らなくて、彼から視線を逸らした。すると向かいの席に座っている安藤の脇に置かれた白い紙袋に気づく。安藤が姿を消す前、その紙袋は持ってなかったはずだ。

「ねえ、安藤? なに買ったの?」

「……ちょっとな」

蓮くんを私に預けてまで買い求めた物は、いったいなに?

興味津々で尋ねたものの、安藤は蓮くんの様子をチラリとうかがうと言葉を濁して紙袋を背後に隠した。

慌てる安藤とは対照的に、蓮くんはチョコ味のジェラートに夢中だ。

私たちに行き先を知らせなかったのも、買ってきた物を秘密にするのも、きっと蓮くんを驚かせたいから。

「ふーん」

安藤の謎の言動を深く追及したい気持ちを抑えつつ、イチゴ味のジェラートを味わった。

< 100 / 210 >

この作品をシェア

pagetop