イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
目鼻立ちがハッキリとしていて、ゴージャスな巻き髪をひとつにまとめている安藤のお姉さんは、子持ちに見えないほど若々しい。
「穂香さん。今回は本当にありがとうございました」
アパレルバイヤーである安藤のお姉さんを前に、パンツスタイルにスニーカーというラフな格好の自分が恥ずかしい。けれど蓮くんと過ごした三日間で、オシャレな格好で子育てはできないことを私は学んだ。
「いいえ。私も蓮くんと一緒に過ごせてとても楽しかったです」
堂々と背筋を伸ばす私に、スタイリッシュなパンツスーツ姿のお姉さんがニコリと微笑む。やはり大きな瞳が安藤に似ていると思った。
「穂香さん、これ。お土産を兼ねたお礼です」
安藤のお姉さんが差し出してきたのは、神戸に本店を構えるチョコレート店のロゴが入った紙袋。滅多に食べられない高級チョコレートを前にテンションが上がる。
「でも……」
けれど私は、蓮くんの面倒を見てほしいと安藤のお姉さんから直接お願いされたわけじゃない。
図々しくお礼を受け取っていいものかと悩みながら安藤の顔を見上げれば、彼がコクリとうなずいた。
「それじゃあ、遠慮なくいただきます。ありがとうございます」
差し出された紙袋を受け取ると、安藤のお姉さんが「いいえ」と首を左右に振った。
「荷物運ぶよ」
「ありがとう」
安藤がお姉さんの荷物を手に取る。向かう先はタクシー乗り場だ。