イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
私と安藤はただの同期。それなのに唐突に『俺のモン』だと言うなんて、いったいどういうつもり?
安藤が口にした意外な言葉に戸惑い、涙も引っ込んだ。そのとき、お姉さんの大きな声を聞きハッと我に返る。
「朝陽。ヘタレのくせに、五歳の蓮と張り合うな!」
安藤にピシャリと言い放つお姉さんは迫力満点。しかし安藤も負けずに言い返す。
「……うるせえよ」
このまま姉弟ゲンカに発展してしまうのではないかとヒヤヒヤして、ふたりの様子をうかがった。けれどふたりはそれ以上言い争うことはなく、お姉さんの顔に穏やかな笑みが浮かんだ。
「穂香さん、今度朝陽と一緒にウチに遊びに来てね」
「ありがとうございます」
私には優しい対応をしてくれるお姉さんにお礼を告げる。
「朝陽、じゃあね」
「……ああ」
若干、ぎこちなさは残っているものの安藤とお姉さんはきちんと挨拶を交わした。ふたりの様子を見てホッと胸をなで下ろした。
蓮くんとお姉さんがタクシーに乗り込み、ドアがパタンと閉まる。
渋々引き受けた子育て同居だったけれど、子供がいる生活も悪くないと思える楽しい三日間だった。
そう思いながら、愛おしい蓮くんが乗ったタクシーが見えなくなるまで手を振り続けた。