イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

マンションに到着しても、エレベーターに乗っても、そして玄関の鍵を開けるときですら、安藤は私と繋いだ手を離さない。

「安藤?」

玄関に入ってすぐに様子がおかしい安藤の顔を覗き込めば、繋いでいた手がようやく解放された。けれど……。

「穂香」

安藤の手が腰に回り、体を引き寄せられると同時にふたつの唇が重なった。昨夜の唇が触れるだけのキスとは違い、安藤は何度も角度を変えながら私の唇を荒々しく塞ぐ。

「……んっ」

ほろ酔い気分も吹き飛び、重なった唇の間から息を漏らすと、閉じていた唇を安藤の舌でこじ開けられた。柔らかくて熱い彼の舌が口内に侵入してくる。

予期せずに与えられた刺激に堪え切れず、膝の力が抜ける。すると私の腰と膝の裏に、安藤の逞しい腕がスッと回った。

「キャッ!」

体が宙にふわりと浮き上がる。思いがけない事態に体のバランスが崩れ、慌てて安藤の首に腕を巻きつけた。

「安藤、下ろして」

お姫様抱っこは、さすがに恥ずかしい。

「もちろん下ろすよ。ベッドの上にだけど」

「そうじゃなくて……」

間近に迫った安藤の横顔に訴えてみても、彼の反応はなかった。

安藤は私の体を軽々と抱えたまま玄関を上がり、廊下を進む。そして寝室に入るとさっきの言葉通り、私をベッドの上に下ろした。

シングルベッドがギシリと音を立てる中、安藤が私の足からスニーカーを剥ぎ取り、それを後方に放り投げる。

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