イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
そんな責任感が強い安藤のことは、尊敬している。けれど胸の中で燻るこの思いがなんなのか、自分でもわからない。
うつむきながら首を左右に振ると、安藤の弱々しい声が耳に届いた。
「悪い。急にこんなこと言われても困るよな。駅まで送る。行こう」
今まで床に座っていた安藤が立ち上がる。
「……ひとりで帰れるから」
安藤の厚意を断ったのは、これ以上気まずい思いをしたくないから。横浜駅に向かう道中で、安藤となにを話せばいいのかわからない。
けれど安藤は私の気持ちを汲み取ってはくれなかった。
「いや、送る」
きっと安藤は夜道を歩く私の身になにか遭ってはいけないと案じて『送る』と言っているのだろう。
「……うん。ありがとう」
安藤の申し出を断り切れずに返事をして寝室を出る。そしてリビングに向かい、部屋の片隅に置かれたキャリーケースに手を伸ばした。しかし私より早く、キャリーケースの取手を安藤が掴む。
「俺が運ぶから」
「あ、ありがとう」
私に対する安藤の気持ちを知ってしまった途端、彼を意識してしまい、お礼の言葉がぎこちなくなってしまった。
私たち、これからどうなるんだろう……。
少しの不安を抱きながら、玄関に向かう安藤の後について行った。